本学美術領域工芸コース(陶芸・ガラス)、デザイン領域メタル&ジュエリーデザインコース、テキスタイルデザインコースは、本年度から領域横断による連携を始めています。愛知県の伝統工芸とコラボレーションし「第38回伝統的工芸品月間国民会議全国大会」(KOUGEI EXPO IN AICHI)に出展する「工芸EXPOプロジェクト」において、工芸コースは瓦の産地である三州とコラボレーションし、鬼瓦の技法を使った作品作りを進めています。2021年10月14日、三河粘土で作った作品を窯元にて窯詰めしました。
学生が学内で制作してきた作品は、一旦、高浜市の株式会社 丸市様に運び込まれ、十分に乾燥させます。粘土を時間をかけてじっくり乾燥させなければ作品にヒビが入ってしまうことがあり、鬼瓦の制作では窯の余熱を使ったり専用の乾燥機を使うなどして乾燥の仕上げを行います。丸市さんでは乾燥機を使い、作品を乾燥していただきました。次に、作品を窯焚きしていただく山本鬼瓦工業株式会社様に運びます。作品は乾燥した状態がもっとももろく、壊さないように運搬します。この日の朝、丸市さんによって、慎重に運び込まれました。作品の状態を確認して、いよいよ窯詰めです。乾燥させた作品をひとつひとつ丁寧に窯へ入れていきます。窯詰めにもさまざまなノウハウがあり、焼くことで作品が縮み窯の中でずれることでヒビになったりカケになったりするそうで、作品の形状を見極め、置き方を工夫したりクッションになるダンボール紙を敷いたりして詰めていきます。作品同士がくっついてしまわないよう、かつ、できるだけ効率よく多くの作品が入れられるよう、さまざまなサイズの煉瓦を組み合わせて棚を作り入れていきます。ぎっしりと作品を詰めたら、窯を閉じて火入れです。
三州瓦のいぶしは、釉薬によるものではなく炭素の皮膜を付着させる技法で、1100度程度に焼き締めたあと、窯を密閉した状態でブタンガスを注入し作品の表面に炭素皮膜を作ります。ガスを扱うため気密が保たれるよう、確認しながら窯の蓋をしっかりと閉めました。窯には、左右6か所ずつ火入れ口が開いており、まずは左右の2か所に点火しました。この状態で1日かけ徐々に温度を上げ、24時間後から3時間おきに2か所ずつ火を増やし温度を上げ、1100度に達したら火を止め、冷ましながらブタンガスを注入し、1日かけて冷却します。冷却の過程で炭素が反応し、いぶし独特の風合いが生まれます。本日窯詰めした作品は、18日に窯出しとなります。
ヒビや割れが発生しないか、いぶしの色合いがどんなふうに作品を変えてくれるか、不安と期待の中、窯出しを待つことになります。
窯詰めの後、山本鬼瓦工業さんの工房を見学させていただき、鬼師(鬼瓦のような立体的な瓦を手作業で作る職人)の作業現場を見せていただきました。山本鬼瓦工業さんでは、文化財になっているような多くの神社仏閣の鬼瓦を手がけていますが、それまで使われていた瓦をそっくり再現することが行われているとのこと。ヘラを使った成形で、迫力のある表情に加え粘土の状態でありながらも細部まで艶やかで美しく、技術的にもたいへん興味深いものでした。普段ではなかなか見ることのできないプロの現場を見ることは、学生にとっても大いに刺激になるのではと思われました。
作品がどんなふうに仕上がるか、いよいよ最終工程を迎えます。