特別客員教授 宮川彬良氏による、ウインドアカデミーコース 公開リハーサルを開催

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 2022年12月15日、東キャンパス3号館ホールにて、ウインドアカデミーコース・弦管打コース 特別客員教授 宮川彬良氏をお迎えして、公開リハーサルを行いました。宮川氏は、大阪フィル・ポップス・コンサートの音楽監督・常任指揮者をはじめOsaka Shion Wind Orchestraの音楽監督、また、NHK Eテレ「クインテット」、BS「宮川彬良のショータイム」などのTVやメディアなどへの出演、「マツケンサンバⅡ」や「第68回紅白歌合戦」のオープニングテーマを作曲するなど、さまざまな音楽シーンで活躍する作曲家・舞台音楽家でありエンターテイナー。あらかじめ課題曲として練習してきた2曲を演奏、公開の場で作曲者自身の指導で演奏がさらに高まり、仕上がっていく過程を披露しました。

 曲目は、おなじみの「マツケンサンバⅡ」と、2021年度全日本吹奏楽コンクール課題曲でもある「僕らのインベンション」、もちろんどちらも宮川氏の作曲です。まずは、演奏の実力を把握したいと学生の指揮で演奏を聞きます。2曲を演奏し、まずはマツケンサンバⅡから指導が始まりました。指揮する学生からは、リズムの一定に保つこととシンコペーションに気を配ったとの発言がありました。しかしながら、打楽器の安定感がもうひとつ、リズム隊に余裕がなくいっぱいいっぱいになっていると宮川氏は指摘。指揮とドラム、ベースだけで演奏を行い、そこに打楽器を加え、リズムを確認していきます。聞いている他のバンドメンバーがリズムを取っていないことにも着目し、お客さんは何を聞きに来ているかが問題であり、この曲では鑑賞するだけでなく心の中で踊っている曲と説明。ビートに乗って安心して音楽を聴いており、踊らせる演奏が必要であるといいます。リズムを安定させ、宮川氏が全身を使って指揮を行うと、演奏はビート感のある楽しいものに様変わりしました。リズムと同時に、オーケストラのように大きな編成でもバンドであることに変わりなく、音楽を作っていくことにはメンバー、一人ひとりの気持ちやリズムへの乗り方が重要であることに改めて気付かされます。演奏が温まってきたところで塚本伸彦 准教授とソプラノ歌手の加藤恵利子さんがステージに加わり熱唱、会場を大いに沸かせました。
 2曲目の「僕らのインベンション」でも同じようにまずは学生が指揮し、それをもとに手直ししていきます。指揮する学生は、譜面どおりに演奏するように気を配ったといいます。宮川氏は、あえて大きく抑揚を付けて指揮し、しっかりしたベースがあるからできることと、さらに楽曲の楽しさを引き出すため曲の背景を説明をします。インベンション(発明)は、音を発明してしている曲であり、主音と導音の関係性を示しメロディーを追いかけていく旋律が交互に交わり続ける曲であると解説。2つの旋律が重なりあう部分が曲の面白みで、パートによってはフルートとクラリネットが掛け合いを行い、旋律が常に重なり合う音楽理論を構築した音楽の基礎を讃えている曲と説明します。その上で、ここでは大きな帆船が入港してくるイメージであるとか、一軒一軒玄関のドアを開けているイメージ、というようにパートごとに絵本を開くような視覚的なイメージを伝えてくれます。「譜面に書けるのは考えていることの60%ほど」と説明しますが、作曲者から曲の背景について学ぶことのできる非常に貴重な機会となりました。楽曲について研究することの意味の大切さを感じさせました。
 当初、質疑応答の時間を設ける予定でしたが、濃い内容にあっという間に時間は過ぎ、公開リハーサルは終了となりました。2曲の演奏でしたが、音楽への興味が一層わき起こる有意義なリハーサルとなりました。