テキスタイルデザインコース、羊の毛刈り体験を行いました

 2023年4月12日、テキスタイルデザインコースでは、愛知牧場から羊飼いの丸岡圭一さん、堀田雅人さん、羊のダディ君(雄、2歳)を学校へお招きし、羊の毛刈りを体験しました。テキスタイルデザインコースでは、羊の毛を刈り糸を紡ぎ織物を製作するまでを行い、地元尾州の毛織物産業についての理解を深める授業を行っています。今回は、その1回目の授業。例年であればクローバー広場で行っていますが、今回は生憎の雨模様、B棟横の屋根のあるスペースで毛刈りを行いました。

 はじめに、貝塚惇観講師から、ウールが羊の毛からどのように作られるか実際に順を追って体験し、素材について学んで欲しいと、授業についての説明がありました。ダディ君には、学生らから思わず、かわいい! と歓声が上がります。
 羊飼いの丸岡さんから、羊と刈り取り方の説明があり、毛刈りが始まりました。ダディ君は、普段は福祉施設でアニマルセラピーを行っているコリデール種の雑種であり、コリデール種は日本の歴史の中で最も多く飼育された品種なのだそうです。刈る時には毛を引っ張らず、軽くつまんだ状態ではさみを入れ、羊にも痛みを与えないようにします。1年間、羊が伸ばした毛には、ゴミが入っていたりしますが、毛の状態から地層のように1年間の出来事が見えるといいます。
 コリデール種の特徴として、メリノ種などに比べると太いものの細く柔らかい毛で、日本では紡ぎやすい柔らかい部類に入るそうで、ダディ君の毛もとてもしなやかで柔らかです。堀田さんは、もともとは食肉のための牧畜を行っていた牧場で働ていたそうで、食べて消えてしもうことよりも残る仕事がやりたくて羊毛の世界へ移ったといいます。日本では、羊の毛のほとんどは捨てられているのが実際で、毛を使ってもらい喜ばれることに感銘を受けたといいます。「羊毛を使った作品を作ることは、持続可能性のある選択肢であり、それは羊やその毛を育てる人々にとっても意義深いことであります。その羊が1年間生きてきた情報がギュッと詰まった毛を、羊からもらって使っているのが人間です。そのことを感じてもらい、そこから生まれた作品をぜひ見たいと思います」と堀田さんは言います。「コリデール種には、クリンプ(繊維のちぢれ)、うねうねとしたちぢれがたくさん入っています。身体の部分によっても毛は違います。肩の部分が一番上質、お尻のほうはクリンプが少なく固めです。ですので、柔らかい部分はマフラー、お尻のほうはアウターに、といった感じで分けられます」と説明、ウールの生地ももともとは動物の毛であり、人の手で成り立っていることを感じさせます。

 一通り毛刈りの体験を終え質疑応答では、雄と雌の違いや、ダディ君の名前の由来について質問が挙がりました。雄、雌では、違いはあるものの性別よりも羊そのものの個性の違いが大きいとのこと。名前については、ダディ君は丸岡さんのもとにいる羊で唯一去勢していない雄で、今年、本当に子どもが産まれパパになったことが告げられました。「羊は、おそらく素材というものはすべてそうだろうと思いますが、知れば知るほど奥が深く、愛おしく感じます。素材の背景をぜひ知って欲しい、何を作るか気持ちも変わってくるのではないかと思います」と答えました。
 貝塚講師からは「羊を通して、さまざま背景があり理由があることを学ぶことができます。どんなものにも背景があります。道具であったり、羊に限らずさまざまな素材には必ず何かしらの背景があります、このことを意識して素材を扱えるようになって欲しいと考えています」と締めくくりました。