ヴィジュアルデザインコース3年生が例年取り組んでいる展示「ナゴヤ展」を、2024年1月29日(月)~2月4日(日)、名古屋市西区那古野 円頓寺商店街のワイナリー・コモンにて開催しました。
「ナゴヤ展」は、名古屋の街でフィールドワークを行い街の魅力を発見しデザインを通して伝える展覧会で、デザインの社会的な役割や重要性を学ぶ実践的な取り組みです。これまでのナゴヤ展では名古屋城や長者町、広く尾張地域そのものを対象とするなど、名古屋や尾張の歴史、文化、産業など、さまざまなものごとをデザインしその魅力を発信してきました。今年度は、名古屋の歴史が色濃く残る「那古野」地域が舞台。近年、リノベーションが進み注目を集める円頓寺商店街や四間道、護岸の整備が進む堀川などが含まれます。調査には地域の人にもご協力をいただき、足を運び聞いて話して考えを深め、作品を制作します。その成果が一堂に披露され、見応えのある展示となっています。
最終日の2月4日、ナゴヤ展を担当する則武輝彦准教授、ヴィジュアルデザインコース 中村直永准教授に加え、ナゴヤ展に長くかかわっていただいている株式会社クーグート 代表取締役 髙橋佳介氏、堀川の調査についてお世話になったナゴヤSUP推進協議会 事務局長 井村美里氏をお招きし、賑やかに講評会を行いました。プロダクト的な作品が中心となる例年にくらべ、街や裏路地の魅力を伝えるスケッチや写真、感じたことを伝えるマンガや書籍、実際に使うことができる食べ歩きの包装紙やパッケージ、Tシャツや提灯といったグッズ、レトロについての考察などなど、バラエティ豊かな展示となりました。
これまでは、まちづくりの企画案を考えることに重きを置いたプレゼンテーションでしたが、今年はストレートに発見した魅力を伝えることが重要視され、学生も楽しみながら制作したことが伝わってきます。
プレゼンテーションは、ひとり3分の持ち時間で説明を行い、参加者が質問し講評する型式で進められました。制作の初期から見ていただいている高橋さんは中間プレゼンから良くなったポイントを確認し、対象をさらに広げるようなコメントや実際にプロダクトにするまでのことなど、今後の展開についてのアドバイスをたくさんいただきました。井村さんは、堀川についての作品を楽しげに見守り、高く評価していただいたことも印象的でした。
学生たちにとってレトロな看板や街並みが印象深かったようで、教員が感じるレトロ感と学生の年齢で感じるレトロ感のギャップなど、掘り下げてみたくなるテーマの発見もありました。円頓寺商店街の近くに住んでいたり、若い頃に円頓寺へ行っていたという祖父、祖母に話を聞いて制作された作品では、家族と街の歴史を思わせデザインという枠組み以上の広がりと深みを感じさせました。
全体の講評として中村准教授は「このプロジェクトは、ふだんの課題以上にグラフィックデザインの力やデザインの本質的な考え方を求められる課題で、苦労したのではないかと思います。自分が興味を持ったことを見つけてそれを作品にする、その準備運動というか練習として非常に良かったと思います。学んだことはもちろん、逆にできなかった部分を糧にしていって欲しいと思います」とコメントしました。
則武准教授からは「半年という限られた時間で町の人とコミュニケーションを取るというのは、皆も大変だった部分もあると思います。それでも、レトロ感の面白さだとか、裏路地の魅力だったり堀川だったり、いろいろな魅力の方向性が浮かび上がってきたのではないかと感じています。おじいちゃん、おばあちゃん世代とのつながりから懐かしさや温かさも感じました。学外で展示するということは、社会を意識することだと思います。人とのつながりもそうですし、歴史の積み重ねもそうです。今いる場所の座標軸があり今という時間の軸があってその中に自分がいるという視点を、街を調べたりする中で持てるようになればと思います」とまとめ、今年のナゴヤ展は終了となりました。