テキスタイルデザインコース、有松・鳴海絞り「張正」とコラボレーション、豆絞りB反をアップサイクルし商品化へ

 テキスタイルデザインコースでは、有松・鳴海絞りの張正さんとコラボレーションし、伝統の「豆絞り」を使った作品を制作し例年出店している「有松絞りまつり」にて販売を行います。加えて、レギュラー商品として通年販売できるよう商品化を目指しています。
 張正さんの豆絞りは、江戸時代から続くドット模様の伝統的な絵柄。生産の過程で出たB反(染めむらなどちょっとした難点のある二級品)を活用し、豆絞りの柄と重ねるように染めを加えて作品を作ります。2021年に開催された「KOUGEI EXPO IN AICHI」でも同様の作品を制作、好評を博しました。今回は、その第2弾ともいうべきプロジェクト。前回は、豆絞りにシルクスクリーンプリントを加えた作品を制作しましたが、今回は板締め絞り(布を2枚の板の間に挟み強く締め、染料の浸透を防いで模様を染め出す染色法)で幾何学模様を加えるという贅沢さ。テキスタイルデザインコース3年生6名の学生が参加しました。

 2024年4月2日(火)、学生らはあらかじめB反の手ぬぐいをすぐ染色できるよう折りたたんだ状態まで準備し、有松駅近くの張正さん店舗に集まりました。定番の正三角形をはじめ、四角形、布がはみだすようにたたんだもの、割り箸で挟んだものなど、さまざまなバリエーションのものを一人10通り、制作してきています。それぞれが10種類のサンプルを制作し、その中からひとつを選び6名で6種類の商品を作ることになります。
 染色する前に、店舗で張正の鵜飼小百合さんから、豆絞りの歴史についてお話を伺いました。
 張正さんの豆絞りは、江戸時代から続く伝統的な絵柄ですが、第二次世界大戦によって手作りの制作方法が失われた後に、張正さんの先代、先々代が研究を重ね復活させたもの。江戸時代の浮世絵を参考に再現する方法を研究、たまたま知多の海水浴場に行った先々代が、豆絞りの手ぬぐいを持っている人を見つけ、初めて豆絞りの実物を手に取ることができ、試行錯誤の末に実現したとのこと。量産することも見据えての再現だったこともあり、じつに5年もの歳月がかかったといいます。
 現在でも豆絞りは、布の変化もあり、決して歩留まりが良いわけではなく、たくさんのB反が出てしまうとのことです。日本で唯一絞りで再現しているということ、また、納得できるクオリティでなければ商品としない職人としての誇りを、あらためて感じさせます。

 お話のあと、張正さんの染色工場へ移動し、染めの作業を行いました。鵜飼敬一さんの指導のもと、浸染(布を染料溶液に浸して染める方法)で染めていきます。今回の制作は商品化を目指すということで、学生それぞれが布のたたみ方とどの部分にどれくらい色を入れたか、制作のレシピを克明に記録、制作する人が変わっても同じような柄を作ることができるようにしていきます。
 3年生の学生は、これまでに何度も手ぬぐいの制作を経験しており、作業自体は慣れたもの。スムーズにそれぞれが10種類の柄を染め上げました。できあがったサンプルは、いずれのサンプルも豆絞りの柄とマッチしどれも魅力的。商品化するものを選ぶのがうれしい悩みになりそうな素晴らしい出来映えで、商品化への期待も高まります。
 学生からは「豆絞りの柄をどう活かせばいいか、丸みにあわせようかとか、いろいろデザインを考えました。絞りをベースに考えることが貴重な経験になりました」「これまで白地に染めたことしかないので、出来上がりを見て印象が想像と違い、面白いなと思いました」「絞りの歴史を聞いて、学ぶことが多かったです」「自分が考えていたことに作業するとき少しアレンジを加えて楽しんで制作できました」「豆絞りの歴史を知ったこと良かったです。柄を重ねることで印象が変わって面白いと感じました」との声が聞かれ、絞りの技術と歴史の面白さをあらためて感じた様子でした。

 今後は、サンプルを持ち帰り商品化するデザインを選び、4月末に商品を制作、2024年6月1日、2日の有松絞りまつりでの販売となります。恒例のテキスタイルデザインコース 有松絞り手ぬぐいブランドプロジェクトと併せ、ぜひ有松絞りまつりへお運び下さい。