カーデザインコース、特別客員教授 永島讓二氏の講座を開催

 カーデザインコースでは、2024年11月6日(水)、7日(木)の2日間にわたり、特別客員教授の永島讓二さんをお招きし、特別講座を開催しました。
 永島讓二さんは、ドイツ・ミュンヘン在住、オペルAG、ルノー公団、BMWと欧州カーデザイン界の第一線で長く活躍するカーデザイナー。ルノー・サフラン(1992-1998年)、BMW Z3(E36/7)、3シリーズ(E90)、5シリーズ(E39)などを担当、また、カーグラフィック誌にてコラムを連載するなど多岐にわたる活躍をされています。
 加えて、今回の講義では、一昨年までカーデザインコースで教鞭を執った高次信也先生、また、ゲストとしてカースタイリング誌 編集長の難波治さん(元(株)SUBARUデザイン部長、東京都立大 教授)も加わり、学生作品の講評会と演習を行いました。

 1日目、11月6日は、学生が制作したカーデザインの講評会が行われました。テーマはあらかじめ与えられていた課題、過去の名車を、現代または未来にあわせてモディファイしてデザインするというもの。どのクルマを選ぶかも課題の一部となっており、車種の選択もそれぞれにゆだねられています。2年生から4年生まで17名の学生がデザインを一枚のボードにまとめ、場合によってはクレイモデルも制作してプレゼンテーションを行いました。なぜこのクルマを選んだか、どの部分がアイデンティティになっているか、そして、それをどう処理したか、じっくりと説明します。
 永島さんの講評では、そのクルマが作られた時代や背景、そのデザイナーがほかにどんなクルマをデザインしたかなどもコメントされ、デザインにとどまらず文化や歴史にまで話題は及びます。もちろん、デザイン画の見せ方や描く技術にも言及されました。思考のプロセスを見せることが重要とする言葉が印象的で、ラフに描いた絵でも段階的に見せるものを高く評価していました。
 また、一見、上手く描けている絵でも、形が曖昧になっている部分を指摘、形のイメージがしっかりできていないと見抜かれます。あらためて、デザイン画は、絵として上手い下手よりもアイデアを明確に伝えるためのものであることが納得できます。
 講評会は、たっぷりと時間を取って延長して行われ、クルマと絵と文化を味わうような、贅沢な時間を過ごしたような有意義なものとなりました。

 2日目は、講義と演習です。まずは高次先生からバイクのデザインについての講義が行われました。オートバイがいかに進化してきたかを、レオナルド・ダ・ヴィンチの自転車の概念から始め、モーターの導入、世界初の量産モーターサイクルの誕生、第二次世界大戦後アメリカのカウンターカルチャーとの関わりなど、順を追って説明されました
 日本のバイクメーカーの成功についても触れられ、ホンダのスーパーカブがアメリカ市場でヒットし、日本メーカーが世界シェアを拡大していった歴史を振り返ります。バイクの構成要素やレイアウトの違いに触れ、クルマのパッケージングとは異なるレイアウトの概念が強調されました。バイクはすべての部品が外から見えるため、構造の美しさと機能性のバランスが重要であると説明されました。
 現代では、エコロジーや快適性に加え、ライディング体験を重視するようになってきているとといわれ、ライダーと一体になって操作することで楽しさが生まれ人と機械がシンクロする感覚が重要だと強調されます。
 近年のデジタル技術の進化によりデザインのプロセスは効率化されていますが、実物モデルで確認することの重要性を説き、デジタルのメリットと手作業の精密さを上手く組み合わせることでより高度なデザインが成り立つことから、手作業の重要さをあらためて強調しました。

 続いて、永島さんの講義では、課題からの流れでカーデザインにおけるレトロデザイン、古いクルマから伝わるデザインの再解釈について説明、現代のデザインにどのように受け継がれているかを解説されました。
 クラシックな要素を持つルノー アルピーヌ A110、Mini、ダッジ チャレンジャーといったモデルを過去の名車を元にした新しいデザインの事例として挙げられ、現代の技術やスタイルに合う形で再解釈されていること指摘しつつ、上手くいっているかそうでないかを皆で考えました。
 単に過去の形状やデザインをそのままコピーするのではなく、現代的なエッセンスを融合しながらもオリジナルの特徴やシンボリックな要素が生かさすことで新しいデザインを作り出すことが肝要と説明されました。
 講義の後半では、就職活動に向けたポートフォリオの作成に関するアドバイスも行われました。メーカーへの応募で特に評価されるポイントとして、昨日の講評会でも指摘のあった、アイデアのプロセスを示すことが重要だと挙げられました。また、デジタルとアナログの両方を組み合わせた構成が望ましいとし、デジタルで作成した3Dモデルだけでなく、手描きのスケッチやマテリアルのサンプルなども併せて提出することが効果的であると説明されました。

 講義の終了後は、学生が質問したり、ポートフォリオを見ていただきアドバイスをもらいました。また、ポートフォリオだけでなくクレイ工房で制作中のモデルを見ていただきアドバイスもいただきました。
 学生にとっては、世界で活躍されたデザイナーに作品を観てもらう貴重な機会となり、有意義な特別講座となりました。