デザイン領域テキスタイルデザインコース、メタル&ジュエリーデザインコース、 美術領域 工芸コース(陶芸・ガラス)と古川美術館は2022年度から本格的にコラボレーションを始め、爲三郎記念館での作品展示「メイゲイのコウゲイ」を開催してきました。これまでは、展覧会に参加する学生が各自、爲三郎記念館を訪れ数寄屋造りの魅力を考え作品制作を行うということを行っていましたが、今年度テキスタイルデザインコースでは、スケッチという形で爲三郎記念館を取材し、それを基にデザインを考え友禅染を使った作品の制作を行うまでをカリキュラムとしてはじめました。2024年8月のスケッチ会はお伝えした通り(→関連記事)ですが、その後学生らは、友禅染の技法を学びサンプルを16枚制作し、それをもとにデザインを考案、作品制作を行い、2024年12月19日(木)、西キャンパスX棟和室を爲三郎記念館に見立てて作品を配置、講評会を行いました。古川美術館学芸員 早川祥子さんをお招きし、担当する樫尾聡美 非常勤講師、さらに昨年爲三郎記念館で展示を行い次回の企画にも参加する大学院工芸制作研究2年の池田考作さんを加えての講評会となりました。今回の作品の中から、次回の爲三郎記念館での展示に加えることも考えており、その選考も兼ねています。
作品は、友禅染を使って制作された座布団、タペストリー、のれん、風呂敷、インテリアボードなどなど、多岐にわたります。学生はデザインのコンセプトを記したデザインボートと授業で制作したサンプルを綴ったサンプル帳を手に、ひとりずつプレゼンテーションを行いました。それぞれに爲三郎記念館からモチーフを選びデザインに落とし込んでいますが、時間をかけてスケッチしたこともあって、ユニークな視点やよく練られたアイデアであることが伝わってきます。数寄屋造りから欄間などの意匠や磨りガラスの模様、雨樋といった建築をモチーフにするもの、春夏秋冬、季節感を盛り込んだもの、古川爲三郎氏の快活とした人となりを感じさせるものなど、デザインのバリエーションもさまざまです。短い期間、しかも初めての友禅染とあり、完成度がもうひとつ足りていない作品もありますが、いずれも可能性を感じさせるもの。経験を積むことで大きく完成度が増すことを予感させます。サンプル帳も、それぞれに見応えがあります。
総評として樫尾講師からは「初めての友禅染で制作自体が大変だったと思いますが、自分で設定したところまで完成できたことはとても良かったと思います。友禅染は絵を描くように進めていける自由度の高い技法なので、今後の制作にこの経験が生きてくるといいなと期待しています」とまとめました。
早川さんからは「夏のスケッチからどんなデザインを起こしてくれるか楽しみにしていましたが、期待以上にいい作品がたくさんあり、私としても記念館の魅力の再発見につながるような視点を得ることができました。染色という技法の制約がある中で、どうやってそれを乗り越えるかということに一所懸命に取り組んでいることが印象的でした。今回の作品の中から、全部は難しいですが、できる限り次回の展示に参加していただこうと考えています」とうれしいコメントがありました。
大学院 池田さんからは「講評する立場は初めてで貴重な体験でした。しかも、展示する作品を選ぶ、展示するならどうするかというようなことを考えて見せていただきました。本当にいろいろな作品があり、それぞれがどう爲三郎記念館とつながっているか、その考え方をたくさん観ることができてすごく有意義な時間でした。ありがとうございました」とコメントしました。
今後、展示作品を検討し、次回の爲三郎記念館での展示につながります。こちらもお楽しみに。