「OLD IDEAS 目の発見、手の対話、デザインのめばえ 2025」
原田祐馬特別客員教授による、“見る・つくる”を根本から問い直す展覧会

OLD IDEAS 目の発見、手の対話、デザインのめばえ 2025

 2025年10月27日(月)〜11月16日(日)の期間中、Art & Design Center にて、デザイナーであり UMA / design farm 代表の原田祐馬氏(2024・2025年度デザイン領域ファンデーション特別客員教授)による企画展「OLD IDEAS 目の発見、手の対話、デザインのめばえ 2025」が開催されました。
 グラフィック、書籍、空間、地域に関わるプロジェクトまで幅広く手がける原田氏が、ここ2年間に本学の学生・教員と行ってきたワークショップや実験をもとに、“デザインの出発点とは何か”を改めて問いかける展示となりました。

 会場には、日常の中に潜む違和感や、見えているのに見えていなかった風景を改めて見つめ直す作品群が並びました。
 美浜町の川鵜のコロニーを歩きながら自然と人間の関係を再考するフィールドワーク、片手に三本のペンを持って描く線の探求、脚立に立って視点をずらすことで世界の見え方を変える試み、くもりガラス越しにイメージの残像を探る作品、傘という道具の役割と重心を問い直す実験など、どれも“観察する”という行為そのものを作品化したものばかりで、来場者の視点を優しく揺さぶるものでした。
 デザイン領域教員12名による作品も展示され、それぞれが異なる視点と解釈で“世界の捉え方”を示し、会場全体が多様な思考の交差点のような空間となりました。

 2025年11月16日には、秋田公立美術大学准教授でアーティストの柚木恵介氏をゲストに迎え、原田氏とのトークイベントが開催されました。会場にはデザイン・アート・教育に携わる来場者が多数参加、濃密な対話が繰り広げられました。両者の活動紹介から始まり、議論は次第に「どうすれば既成概念を越え、新しい視点を獲得できるのか」「学生に“気づき”を生み出すにはどうすればよいか」へと広がっていきました。
 印象的だったのは、両者が共通して語った“観察する力”の重要性。いつもとは違う角度でものを見ること、気になった違和感をそのままにしないこと、説明できないけれど惹かれるものを大切にすること、技術は精度を上げるためではなくエラーに気づくためにあること、など多くの示唆を含むものとなりました。
 柚木氏は、街の痕跡を観察しそこから物語をつむぐワークショップの実例を紹介し、原田氏は、日頃から写真に収めている“違和感のストック”を披露しながら、「気づけるようになるためには、自分のご機嫌の取り方を知ることが大切」と語りました。会場からも次々と質問が寄せられ、活発な意見交換が行われ、来場者からは「見え方が変わった」、「自分も観察してみたくなった」といった声が聞かれました。

 本展は、完成されたデザインを並べる展示ではなく、日常の中にある小さな発見や違和感から出発し、手を動かし、問いを深め、形が生まれていくそのプロセスを可視化するものでした。展示空間を歩くことそのものが、観察し、考え、つくるというデザインの根本へと立ち返る体験となり、学生にとってはもちろん、デザインを職業とする人々にとっても、ものを見る姿勢を揺さぶる豊かな時間となりました。デザインの出発点へ立ち戻る機会となる非常に豊かな展覧会となりました。

原田祐馬氏/柚木恵介氏 トークイベント

The October of Cormorants|川鵜の十月

To Pass, To Touch|ボールに触れる、パスをする

Three Pens, One Hand|三本のペン、片手で描く

A View from the Ladder|脚立から世界を見る

Slapstick Umbrella|傘を立てて地球の重心を探す