歩いて、見つけて、伝える ヴィジュアルデザインコース 円頓寺・那古野の魅力を再発見・発信する「ナゴヤ展」開催

 ヴィジュアルデザインコース3年生が例年取り組んでいる展覧会「ナゴヤ展」は、実践的な授業成果発表の場です。学生が自らまちに出てフィールドワークを行い、地域の魅力を発見し、それをデザインとして社会に伝えることを目的としてきました。対象は尾張地域全体から、名古屋城や長者町といった特定エリアまでさまざまで、名古屋の歴史や文化、産業など多様なテーマが扱われてきました。また、展示を学内にとどめず、地域と密接につながる場所で行ってきたことも、この展覧会の大きな特徴です。
 今年度の「ナゴヤ展」も、昨年に引き続き、名古屋の歴史が色濃く残る円頓寺・那古野エリアを舞台に開催されました。近年、地域活性化が各地で進められるなか、経済的効果だけでなく、文化の継承やコミュニティの豊かさといった視点が、より重視されるようになっています。そうした状況において、地域の価値を見つめ直し、可視化し、共有するデザインの役割は、これまで以上に重要なものとなっています。展覧会は2026年1月25日から2月1日まで、円頓寺商店街のワイナリーコモン3階スペースで開催され、最終日の2月1日には学生によるプレゼンテーションが行われました。
 さらに、円頓寺商店街のgalerie P+ENでは、映像作品のプロジェクター上映に加え、商店街に溢れる看板や文字を題材にしたタイポグラフィ作品の展示も実施。エリア全体を使った多層的な展開となりました。

 プレゼンテーションの冒頭、授業を担当する則武輝彦教授は、「プロフェッショナルの企画を単に模倣するのではなく、学生という立場で、まちとどう関わることができるのかを考えてきた」と語りました。デザインの変化とともに展示の役割も変化してきていること、そして学生一人ひとりが「自分には何ができるのか」を考えながら制作に取り組んできたことが、今回の展示の土台になっています。
 学生29名の作品は、都市の音を通して過去と現在をつなぐサウンド作品、まちに残る建築様式や素材に着目した体験型展示、生活の痕跡を収集・編集した冊子や映像、文字や色彩を通して都市を捉え直す試みなど、多様な視点と表現が並びました。完成度や技巧だけでなく、学生一人ひとりが「何に価値を見出したのか」「どのように地域と向き合ったのか」という思考の過程そのものが、展示空間ににじみ出る構成となりました。
 講評は、ゲストとして公益財団法人名古屋産業振興公社 国際デザインセンターの水谷仁美さん、昨年に引き続き建築を軸にフィールドワークやアートプロジェクトを行う桂川大さん(STUDIO 大/おどり場 代表)を招き、ヴィジュアルデザインコースの中村直永准教授、則武教授の4名で行われました。
 水谷さんは、「完成されたアウトプット以上に、学生がまちと向き合い、悩み、試行錯誤してきたプロセスがはっきり見えた」と評価し、「今の20代がどのような視点で都市を見ているのかを知ること自体が、社会にとって大きな価値になる」と語りました。
 桂川さんは、「地域の魅力は、すでに見えなくなっているものや、失われたものの中にあることが多い」としたうえで、「それを個人の視点からどう立ち上げるか、そのバリエーションが昨年以上に豊かだった」と評価しました。一方で、制作物が最終的にどこへ向かい、誰に届くのかという“到達点”を、今後さらに意識していくことへの期待も寄せられました。
 中村准教授は、「いわゆる地域ブランドづくりとは異なり、自分自身の視点を、デザインという道具を通して社会と関わらせようとしている点が、今年の特徴」と指摘し、リサーチの深さとアウトプットの完成度をどのように両立させていくかが、次の課題になるとコメントしました。
 最後に則武教授は、「ナゴヤ展は毎年チャレンジの連続で、正直に言えば危うさも抱えながら進めてきた」と率直に語り、「発見したものをどう発信するのか、そのためのヴィジュアルデザインの力を、あらためて自分の“道具”として見直してほしい」と学生に呼びかけました。学生一人ひとりの視点が社会に対してどのような意味を持ちうるのか。その可能性を問い続ける場として、「ナゴヤ展」は今年も大きな手応えを残しました。

 円頓寺・那古野という街を歩き、観察し、考え、表現する。その積み重ねから生まれた今回の「ナゴヤ展」は、名古屋という都市の新たな表情を映し出すと同時に、これから社会へ踏み出していく学生たちの現在地を、力強く示す展覧会となりました。

galerie P+EN

ナゴヤ展

作品