卒業制作展記念講演会 皆川 明氏「クリエーションと社会のつながり」

 卒業制作展記念講演会として、ファッション・テキスタイルブランド minä perhonen を率いるデザイナー、皆川 明氏をお迎えし、「クリエーションと社会のつながり」をテーマにお話しいただきました。司会はテキスタイルデザインコースの扇千花教授が務めました。

 講演では、自身の創作の原点や30年にわたるものづくりの歩みを振り返りながら、「クリエーションは社会と切り離されたものではなく、使う人と作る人、その双方の喜びをつなぐ営みである」と語られました。デザインは単なる商品開発ではなく、素材や技術、時間、そして人の記憶までをも含む循環の中にあること。とりわけ、効率やスピードが重視される時代だからこそ、丁寧に時間をかけてつくる姿勢が、社会の豊かさにつながるのではないかと述べられました。
 また、自身が学生時代に「不器用だった」と振り返りながらも、「続けることが景色を変えていく」と語り、卒業を迎える学生たちにエールを送りました。日々の暮らしの中で手を動かし、素材やプロセスに目を向けることが創造の源になるという実感から語られる言葉は、会場に集まった学生や教員に深い印象を残しました。

 質疑応答では、「速さや効率が支配する社会でどう表現者として立つか」との問いに対し、「自分にとって心地よい速度を見失わないこと」が大切だと応答。流行や外的評価に左右されるのではなく、自らの価値観と社会との関係を丁寧に築いていく姿勢が、これからのクリエーションを支えるとのメッセージが語られました。
 創作と社会、個人と他者、時間と価値……。多くの示唆に富んだ講演は、卒業制作展の締めくくりにふさわしい、あたたかな示唆に満ちた時間となりました。