名古屋芸術大学

中河 豊 教授

学生部音楽学部主任
音楽総合コース運営委員長

自由に選択できるということを最重要視しています

音楽総合コースができた時のことと、その狙いを教えて下さい。

 音楽を学びたいけれども、具体的に専門を決めるには経験が足りない、はじめにターゲットとして考えたのは、こうした学生たちでした。様々な音楽の領域で自分を試し、その中で可能性を発見してもらいたい、これが出発点でした。最初の2年間は、関心のある領域に自由にチャレンジし、その後ある特定のコースを選ぶ。演奏学科では、声楽、ピアノ、弦管打、電子オルガンの各コースのから、音楽文化創造学科では、作曲、サウンド・メディア、音楽教育、音楽療法、アートマネージメント、さらにパフォーマンス系のミュージカルとジャズ・ポップス、これらのコースから選択する、こうした構造でした。音楽総合コースの特徴として、できるだけ自由にすることを重視しました。最初からカリキュラムを作っておいてそれに学生を向かわせるのではなく、学生が自分で自由に教科を組み合わせてカリキュラムを作れるようにすること、これが基本的な考えです。その時に、教授会の中で議論がありました。音楽総合コースに入ってきた学生が、3年になって、特定のコースに転科する場合、その専門コースの授業についていけるのか、スキルが足りないのではないかという心配です。そういう経緯があり、音楽総合のまま卒業できる道筋も作っておくことになりました。基本的には、1・2年次でいろいろなことにチャレンジし、3年次で専門コースを選択する。ただし、4年間音楽総合コースでやっていくこともできるということにしました。

実際にコースが始まって想定していたことに違いはありましたか?

 当初、予想していたことと違う反応が出てきました。「お試し」ということで来た学生は当然いましたが、それ以上に、自由にカリキュラムが選択できる、特に4年間自由に取れることに魅力を感じ、幅広く学びたいと思っている学生たちが集まってきました。当初のスキルについての心配も杞憂にすぎませんでした。例えば、特定の楽器で、専科の学生よりもよくできる学生が音楽総合コースに入ってきたりするようなこともあります。非常に意欲的な学生がたくさん入ってきて、うれしい誤算でした。そういう形で音楽総合コースは動き始めました。

最初は何名くらいで始まったのですか?

 立ち上げた年は、10名ほどでした。その時は、音楽総合コースが全体に占める比率は、すごく少なかったですし、教員、あるいは学生たちも、音楽総合コースについて認識がなく、学生たちは萎縮ぎみであったように思います。その後、自由にいろいろなことに取り組めることが認知されてきて、非常に人気が出てきました。たくさんの学生が選択してくれるようになり、音楽総合コースが名古屋芸術大学音楽学部の大きな特色になっていると思います。

音楽総合コースには意欲のある学生が多いとのことですが、その源になっていること、動力源はどんなことでしょう?

 自分が関心を有することに創造的に挑戦できることだと思います。典型的パターンを紹介します。音楽文化創造学科では、すでにロック・バンドの経験がある学生が、ジャズ・ポップスコースでギター、ベース、ドラム、ヴォーカルなどのレッスンを受講し、サウンド・メディアコースでコンピュータを利用した作曲を学ぶ。これは自分のオリジナルの曲をつくり演奏するためです。演奏学科では、二つの楽器あるいは楽器と声楽を選択する学生がいます。また、音楽文化創造学科と演奏学科の二つの学科をまたいで教科を選択することは、音楽総合の学生たちが普通に行っていることです。自分だけのカリキュラムをつくるわけです。これが音楽総合コースの魅力です。

演奏など、実技の積み重ねが必要なコースでも問題はありませんか?

 カリキュラムについては、当初、本当に自由にしました。ところがやっていくうちにルールに弊害が出てきました。例えば4年生になってから1年生向けの授業を選択するようなことです。音楽のカリキュラムは基本的には積み上げで、年次が上がっていけば当然スキル・レベルも上がっていきます。ところが自由に選択できるものですから4年になってから1年の教科を選択することが起きてしまいました。そのため現在では、3・4年生になったらあるコースの必須単位を必ず習得して卒業していくように改めました。3・4年では必ず何かのコースの専門的な部分を身につけるということしたわけです。これがカリキュラム上の、これまでやってきた中での最大の改革だったと思います。それから、もう一つ、現在は基礎科目、音楽の一番基本になる部分についてしっかり教育しなければいけないことがはっきりしてきました。学生たちへの指導としては、基礎的な教科をしっかりと学ぶように、新入生オリエンテーションの段階から指導しています。その点も学生たちの反応はいいのかなと考えております。

オリエンテーションはどんなふうにやるのですか?

 入学した時点で大学側がどのように学ぶのかを説明し、学生たちがカリキュラムをそれぞれ作成し、教科の選択をします。毎年、オリエンテーション合宿をやっていまして、学生達は履修届案の作成までやります。その場に全コースの教員が出席してコースの授業内容をプレゼンし、それを聞いて学生が取りたいものを決めていく、そういうことをやります。これまでは、4月1日〜2日で合宿に行きました。今年は、日程上の都合から合宿という形ではなく学内で同じようなことをやります。
 オリエンテーションの場がすごく大事なのは、カリキュラムの作成もさることながら、そこで学生達が知り合えることですね。音楽総合コースの学生はいろんなコースに分かれて受講することになりますので、コースとしてまとまることがなく、学生同士のつながりが薄くなっています。4月に集まって知り合いになるということは、学生生活に大事なことだと考えています。今年は、合宿に行けないですから、交流する場を食堂などで作ろうと思っています。在校生の音楽総合コースの学生にそのための企画を考えてもらっています。

卒業後の進路はいかがでしょうか?

 音楽総合コースだけの特殊性という点では、あまり目立ったことはないかと思います。名古屋芸術大学音楽学部の就職の特徴として、教員採用での健闘があります。最新の資料では、昨年度は在学生6名、卒業生11名、合計18名(うち補欠合格1名)が教員採用試験に合格しました(一昨年度も合計で18名、うち補欠合格2名)。これに加えて、常勤講師になった卒業生も数人います。音楽学部ですから、音楽家になる卒業生は当然いますし、様々な形で音楽を教える卒業生は多くいます。また、福祉関係や一般企業にも就職しています。全体として、昨年度の就職率は現時点での情報では90パーセントでした。

フレッシュマンキャンプ

 入学後すぐに自分が目指す音楽活動にふさわしい学びは何なのかを、オリエンテーションで明確にします。各コースの先生と在学中の先輩が出席し、専門的なアドバイスをしながら進路について相談します。4年間を共に過ごす仲間と交流を深めることも目的の一つです。一緒に入学する学生と親睦を深め、音楽活動に不可欠な仲間をたくさん作ることができます。

▲ページの先頭へ