デザイン領域イラストレーションコース3年生後期の実技授業「デザイン実技III-4」において、森林認証団体・FSCジャパンと連携したPRコンテンツ制作プロジェクトの最終プレゼンテーションが、2026年1月14日に行われました。本プロジェクトでは、マンガや絵本など、イラストレーションコースならではの多様な表現手法を用い、FSCの活動や理念を広く社会に伝えることを目的としています。
授業は、企業・団体のPRを担うコンテンツを実際に制作し、出版や配信を通じてユーザーに届けるところまでを視野に入れた、実践的な課題として構成されました。依頼元であるFSCジャパンは、世界的な森林認証制度を運営する国際的な団体で、「環境」「社会」「経済」のバランスを保ちながら森林を守る仕組みを推進しています。学生たちは、こうした複雑で専門的な内容を、いかに“知らない人にも伝わる表現”へと落とし込むかに挑みました。
プロジェクトの導入として、2025年9月にはFSCジャパン事務局長・西原智昭さんを招き、FSCの理念や国際的な役割についての講義が行われました。続く10月には、三重県紀北町にある速水林業を視察(→関連記事)。実際にFSC認証を受けた森林を歩き、持続可能な林業の現場を体感しました。山林の多様性や木材が製品になるまでの流れ、認証制度が社会や暮らしとどのように結びついているのかを、五感を通して学ぶ機会となりました。11月の中間プレゼンテーションを経て構想を深めた学生たちは、それぞれの関心や得意分野を活かしながら、最終制作に取り組みました。
最終プレゼンテーションには、FSCジャパン事務局長の西原智昭さん、マーケティング&広報マネージャーの河野絵美佳さん、プロジェクトをコーディネートした西埜隆文さん、そしてイラストレーションコース卒業生でマンガ家として活躍し、本学教育学部「アトリエ・コモンズ」の助手も務める徳本夏奈子さんが講評者として参加しました。
発表された作品は、絵本やアニメーション、小説、ゲーム、Webサイト、さらには多様な展開が可能なキャラクター開発など実に多彩で、子ども向けにやさしく伝えるものから、社会問題として深く掘り下げた表現まで幅広い内容となりました。SFやホラーといったジャンルを取り入れた作品、SNSでの拡散を意識した構成など、現代のメディア環境を強く意識した点も印象的でした。伝える相手を明確に設定し、それに応じて媒体や表現方法を選択していることが随所に見られ、実践的なコンテンツ制作として高い完成度を示していました。
本プロジェクトをコーディネートし、長年企業広報に携わってきた西埜さんは、作品全体を振り返りながら次のように講評しました。
「本当にお疲れさまでした。アニメもあればマンガもあり、キャラクターやCMのようなもの、小説まである。こんなにも“伝え方”の選択肢があるのだと、改めて感じました。森林を取り巻く課題や問題は、言葉だけで説明しようとするとどうしても難しいテーマです。しかし、こうした媒体を通すことで、何も知らない人にも伝えられる可能性がある。まだ完成していない作品もありますが、ぜひ完成させてほしい。完成したものはぜひ見せてください。必ず社会の役に立つ作品になると思います」
マーケティング&広報マネージャーの河野さんからは、「最初にこの企画をいただいたとき、正直、FSCのような難しいテーマをマンガやアニメでどう伝えるのか、まったく想像ができませんでした。しかし今日、皆さんの発表を聞いて『ここまでできるんだ』と本当に驚きました。私たちの普及活動にとっても、非常に参考になる視点や切り口が多くありました。完成した作品を、ぜひ今後も共有してほしいですし、また一緒に何かできる可能性も感じています」と、今後への期待が語られました。
FSCジャパン事務局長の西原さんからは、「完成度の高さはもちろんですが、皆さんの作品から『伸びしろ』を強く感じました。迷いながら考え、試行錯誤し、形にしようとするプロセスがきちんと作品に表れています。ものづくりを続けていくうえで、その“迷い”はとても大切です。簡単に答えに行かず、これからも考え続け、作り続けてほしい。FSCというテーマも、ぜひ最後までしっかり落とし込んで完成させてほしいと思います」と、クリエイターとしての成長に向けたメッセージが贈られました。
徳本さんからは、「他の課題も多い中で、これだけのボリュームとクオリティを備えた作品を仕上げているのは本当にすごいことです。難しいテーマでしたが、自分の個性や得意な表現を活かしながら、どう伝えるかを真剣に考えている姿勢が伝わってきました」と、学生に近い立場から今回の経験が今後の制作につながることへの期待が述べられました。
授業を担当した谷川司助教は、学生たちが1年次から積み重ねてきたプロセスを踏まえ、「今日の発表には強い感動を覚えました」とコメント。ナカノ准教授も「プレゼンテーションを通して、人に伝えようとする意志がはっきりと感じられました」と締めくくりました。
今回の最終プレゼンテーションは、単なる課題発表にとどまらず、社会と接続するコンテンツ制作のリアルな現場を体験する場となりました。今後は、完成度を高めた作品の共有や、FSCジャパンとのさらなる展開も視野に入れられています。本プロジェクトで得た経験は、学生たちにとって、クリエイティブの力で社会課題に向き合うための確かな一歩となりました。