人間発達学部長
人間発達学研究科長 学長補佐

教授溝口哲夫

幼保連携型認定こども園
森のくまっこ

園長松本真理子

子どもも先生も、遊びの中に成長がある

課外授業や芸大とのつながりに期待する声

森のくまっこの方針について教えて下さい。

松本:森のくまっこは、4月に開園したばかりの新しいこども園です。2つの公立保育園が統合され、新設されました。ご覧のとおり、まわりには田んぼや緑の自然が残るとてもいい環境です。そうした環境の中、生活や遊びを通していろいろな経験をし、泣いたり、笑ったりしながら成長し、生きる力を育てていきたいと思います。

溝口:熊之庄保育園と薬師寺保育園が統合されたわけですが、どんなことが変わるのとか、親御さんから戸惑いの声が届くようなことはありませんでしたか?

松本:事前に何回か説明会を行いました。教育・保育の方針を決めて昨年9月に大規模な説明会を開き、大勢の方に参加していただきました。保護者会はどうなるんですかといったことや、課外授業はどうするんですかといった、たくさんの質問をいただきました。方針としては、こども園ですがもともとが保育園であり、保育を中心に据え、これまで公立の保育園ではできなかったことを充実させていこうと考えました。お母さんたちは子どもにたくさんの経験を与えたい、でも、基本的に仕事を持っている方がほとんどなので時間的な余裕もなく、こども園に課外授業の充実や芸大とのつながりに期待を寄せる声がたくさんあります。保育を充実させつつプラスアルファを考えて準備しました。

溝口:どんなことが人気ですか?

松本:英会話が人気ですね。知り合いに英会話教室の講師をされている方がいまして、お願いしてやっていただいています。園内でやっているので、英会話が終わってから延長保育に戻ることができるようにしています。それからレゴも人気ですね。また、スイミングスクールに園に迎えに来てもらうようにしたり、課外教室を紹介したり、園を起点としていろいろな経験ができる機会を紹介していて、とても喜ばれています。ただ、コロナの影響もあり、まだ課外教室など思うようにできておらず、楽しみにしていた親御さんから問い合わせがあることもあります。
 それから課外教室のほかに、教育という部分でも期待があって、園では3、4、5歳児を対象に月刊絵本を購入しています。

溝口:希望者だけですか?

松本:全員です。公立だと親御さんの負担が増えることはなかなか難しいと思いますが、担任からも子どもたちに同じ教育ができるようにと要望があり、親御さんにお願いしてみました。反対もあるのでは思っていましたが、意外にスムーズに決まり、やはり子どもに教育やいろいろな経験をさせたいという親御さんの要望の強さを感じました。

溝口:親御さんにとって、保育園が子ども園になり、どんなことができるようになるか、そこが一番の関心ではないかと思います。公立の保育園ではできなかったこと、絵本や課外授業など、そうしたこともとても魅力的なことではないでしょうか。

もっともっと先生にも学生さんにも来て欲しい!

松本:大学との連携を期待する声も大きくて、音楽会を行ったり、ゼミの学生さんに来てもらったりすることもあるかと思います。説明会でも質問があったんですが、親御さんたちがやっぱりすごく楽しみにしていて、いつですかと聞かれたりするんですよ。

溝口:今の状況下では、まだ何ともいえませんが、どんなことができるだろうかと考えています。

松本:じつは、小学校へ向けて配慮が必要な子がいまして、親御さんも不安に感じています。なかなか相談にも行けず、そんなときに心理の先生に来ていただくことやお話を聞く機会があればと思うんですよね。たしかニコニコワークショップでも、そんな機会があったかと思いますが……。

溝口:ニコニコワークショップでは、未就園児のお子さんが親御さんと一緒に来て、ほかのお子さんや学生のお兄さんお姉さんと楽しく遊んだりしています。そんな中で親御さんから子育ての悩みや相談を受けることがあります。その場合には、学部の先生が専門の立場からアドバイスをすることもあります。

松本:ぜひ、うちの園でもお願いしたいです!

溝口:もちろんです。私たちとしては、「森のくまっこ」「クリエ幼稚園」ばかりでなく、今後は北名古屋市との連携のもとに、広く地域の保育園や小学校からの相談にお応えできるような仕組みができればと考えています。他大学でも附属の保育園や幼稚園を持つところはあります。しかし、実際には物理的な距離だとかさまざまな事情があってうまく機能していないのが現状のようです。名古屋芸大の場合、クリエ幼稚園はすぐとなりに、森のくまっこも歩いて数分のところにあります。学生がボランティアに入ったり、日常的につながりがあったりするのは、大学としてもとてもいいことだと感じています。ただ、もっともっと学生たちには、保育・教育現場のことを知ってほしいと思っていまして、そういった機会を増やしたいと考えています。森のくまっこも、新たな活動の場として考えられたらいいなと思っています。
 大学では、「ボーダレス」の観点で学部や領域の垣根を取り払った様々な取り組みを推奨しています。人間発達学部だから保育、教育ということではなく、東西両キャンパスの学生たちが一緒になって、ワークショップを開いたり、子どもたちを交えて演奏したり、ものづくりをしたりすればとても楽しいですよね。実際にクリエ幼稚園では、すでに東西キャンパスとつながりがあり、園児の作品を大学で展示したりしているんですよ。

松本:そうなんですね! うらやましい!! 安全で、楽しくて、子どもたちが興味を示してくれるものが一番! 新しいものも、どんどん取り入れていきたいと考えています。

幼稚園・保育園と大学、小学校の連携も

溝口:小学校に勤めていたときから、やりたいと思いつつできなかったことが、小学校と幼稚園・保育園との連携、幼保小の連携なんですよ。年度末に、次年度小学校に入る子どもたちの様子なんかを知らせてもらうということはやっていますが、先生同士で話すだけではしっかりと伝えることは難しいと思います。入学前に小学校を体験する、あるいは小学校の先生が子どもたちの実際の様子をここへ見に来るといったことができれば、小学校へ上がっても戸惑うようなことは少なくなると思います。ぜひ、やってみたいですね。

松本:小学校の先生に少しだけでもお話ししてもらったり、子どもたちを見てくれるだけでも、親御さんはとても安心すると思います。

溝口:心配事など先生と少しでもお話しできると違いますよね。そんなことができればと思います。じつは、昨年の9月から、小学校の子どもたちを大学に招いて、人間発達学部の教員や学生が先生になって授業を行う「子ども大学」というイベントを開催しました。初めての試みでしたが、熱心に授業に参加してくれて、大きな手応えを感じました。幼稚園、保育園と大学、さらに小学校、中学校とつながりが少なかったわけですが、地域的にもうまく連携が取れるようになればと思っています。

幼保連携型認定こども園 森のくまっこ

http://www.fukushi-nua.or.jp/morinokumakko/

 幼保連携型認定こども園 森のくまっこは、令和2年4月に開園しました。自然豊かな環境に囲まれながら、「遊び」を通して様々なことを学び、生きる力を身につけていくことを教育・保育目標とし、名古屋芸術大学グループならではの感性教育を行っています。音楽領域の学生に楽器の生演奏を行ってもらったり、美術領域の学生に造形や制作を教えてもらったりするなど、名古屋芸大グループならではの取り組みを行います。