名古屋芸術大学

西村正幸

コミュニケーションアート、版画、平面 教授

より専門性の高いファンデーションが行われています

2008年から、これまで西村先生が中心となってアートクリエイターコースの運営をされてきました。今年度から絵画以外のコースがまとめられてアートクリエイターブロックとなりました。成果というと早計かもしれませんが、変化など感じられますか?

 高校生の現状や学生の様子、話を聞いて必要なことを組み入れてアートクリエイターコースを作ってきました。もちろん想定したことと違うところもありますが、効果があったと実感しているところもあります。これまで、専門を選択してきた学生ではやらなかったことをやってみるということが大事なことだと考え、OHOC(4年間で100人の様々なクリエイターに出会い、卒業時には自分自身が101人目のクリエイターになるというプロジェクト)やいろんなプロジェクトに参加させるようにしています。そういった中で、良い影響を受けるような、一所懸命やっている学生を見て魅力的に感じ触発されるような動きが起きてきています。ファンデーションとプロジェクトの相乗効果かなと思います。

プロジェクトには1年生から参加できるんですか?

 そうです、1年生からプロジェクトに加えています。コミュニケーションアート専任の松岡君(松岡徹 教授)とも相談していたんですが、彫刻、陶芸・ガラス、美術文化、版画・平面、一緒に1つのブロックとして何かできることをやっていこうと考えています。全部のコースを一緒にするというところで、難しいかもという心配もありましたが、上級生が1年生をうまく使ってくれることを期待して参加させてみることにしました。いろんな体験をすることによって、個人の中で新しい発見があったり、自分には今までなかった新しいことを受け入れる感覚が養われていくと期待しています。

学生の反応はいかがですか?

 チュートリアル・コーチング制を導入して、学生と面談をやって確認しています。今年のことではないんですが、石彫の授業を受けた学生たち、女の子たちの反応がとても良かったことがありました。石彫のなかなか形になってこないところを、却って素材と格闘することを実感として受け取ったみたいで、体験して決めることの大事さを感じました。「やらせてみて見つけるということ」これは間違ってなかったなと感じています。

すべての分野を体験するというと、広く浅く総花的になってしまうような気がしますが?

 体験させることによってその人の専門を見つけ、専門の人たちを育てていき、専門分野を持った卒業生が、地域、福祉、医療、教育、いろんなところにいって自分の専門を役立たせるという順序なんですよね。そのためのファンデーションだと考えています。段階としては、ファンデーションで技術的なことを専門の先生に教えてもらって、我々がコーディネートして欠けている部分を補っていく。そうして2年、3年と4年とかかってチームを組んだり個人の専門を極めていくという図を描いています。以前のアートクリエイターよりも1年生が専門化されたので、より専門的なことができるかなと考えています。実際、キャンパス内で制作している彼らの光景ですが、デッサンの授業で屋外でイーゼルを持って描いている。洋画の授業でも今や屋外で描いていることはあまり見かけなくなりました。彫刻の授業でも粘土を付けて人体を作っています。彫刻を専門に取った学生しかやっていなかったことですが、今年は、ガチッとやってもらっています。オーソドックスだけど、今、一番足りないことを考えてカリキュラムに入れています。一番専門性がないと思われてるアートクリエイターの学生が、昔ながらの一番骨太なことをやっているように思います。現場の先生たちは、すばらしく情熱を持って専門的にやっています。そういったことも、外部にももっと広まってほしいですね。

就職の話は少々気が早いかも知れませんが、アートクリエイターコースからは2期卒業生を送り出しています。どんな仕事に就いているんでしょうか?

 だいたい8割が就職、2割が作家活動を行っています。デザインナー、カメラマン、美術の企画会社、ディレクター……、概ね望んでいた部分には行っているように思います。クリエイティブな仕事、あるいは教職員などになっています。いままでのアートクリエイターコースと違い、今年の学生からは、他のコースの学生とも交流を持ちやすくなります。一緒にファンデーションを受けた仲間ですからね。2年次以降の専門は5クラスありますが、コミュニケーションアートは、他のコースとは同列と考えていません。他の4つを結びつける核となる役割ができるクラスなのです。例えば美術文化クラスが全体のまとめ役としてプロジェクトを企画、プロデュースし、コミュニケーションアートがディレクター的な役割を担う。そうして必要な素材を提供できるそれぞれ専門のクラスがある。そんなチームが作っていけるようになって欲しいんです。そうした専門家が社会の中に入っていけば、世の中も少しずつでも変わっていくのではないかと思うんです。プロを育てていろんな現場に入っていく、頑張っていけばその現場が変わる。世の中も変わっていく。長い道のりですが、それが大きな目標ですね。

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