芸術教養領域 リベラルアーツコース第二回卒業研究展

おもしろすぎるぞ!
芸術教養領域 リベラルアーツコース

 今年度、第2期の卒業生を送り出すリベラルアーツコース。卒業制作展に先立ち、1月14日~26日まで東キャンパス Art & Design Center Eastにて「芸術教養領域 リベラルアーツコース第二回卒業研究展」が開催されました。その内容がユニーク! カッパに、星座に、SNSアイコン、就活ファッション!? と、アレっ、これってアートだっけ?? となりそうですが、もちろんちゃんとアートと社会をつないでいます。現代アートと考現学と社会学をごちゃまぜにして、楽しそうなこと全部やっちゃいましたといった感じ。さまざまなテーマから今の世の中とアートに迫るリベラルアーツコースの現状を伺いました。おもしろすぎるぞ! リベラルアーツコース!!

茶谷 薫

芸術教養領域 リベラルアーツコース 教授/芸術教養領域主任

京都大学大学院理学部卒、同理学研究科修士課程修了、京都大学博士(理学)
霊長類研究所を経て、人類学、生物学、考現学、マンガ学と、多様な分野について研究。フィールドワークにも長け、動物園のサルからエコバッグ、室外機とあらゆる事象を対象に調査、研究を行う。自宅には2万冊を超えるマンガの蔵書があるという

芸術教養は何でもあり!

バラエティ豊かな卒業研究、なんだか笑える面白いものもありますね

今年は2期生の卒業ですが、4年間を終えていろいろな学生が育ってきて面白いなって思います。4年間学生を見ていると、昔の私のように成長しない人がたまにいますが(笑)、高校を卒業して入ってきて、大学生になったなと感じさせてくれる人ばかりです。芸術教養ではチュートリアルという個人面談を頻繁に行っています。しっかりと時間をかけて、長いときには2時間くらい、たぶんほかの領域よりも密にやっていると思いますが、そこで学生たちのやりたいことを聞いて研究対象を決めていくような感じです。芸術教養は何でもありっていうところなんですけど、幅広くいろいろなことを知って、アートに繋がるようなことを研究します。ただアートといっても、それがファインアートに限られることではなく、マンガやアニメ、映画とか、今だとゲームでもいいですし、それこそSNSとかでもいい。そういう文化的なことに興味を持ってくれればいいですね。

両方できる人になってもらいたい

好きなことを対象に研究できるわけですね

自分で考えて行動することが大事です。好きなことをやって、結果的にみんなのためになるというのがたぶん一番いいんですが、なかなかそうも行かないのが世の中です。ですから、芸術教養では自分の好きなことを研究すると同時に、生き方も教えています。世の中でうまくやっていく部分も大事です。ただ、それだけになってしまうと新しい発想も出てきませんし、本当の自分というものを見失わないようにしてもらいたいと思います。先ほど成長しない人ということを言いましたが、誰からも学ばない人のことなんです。勉強して誰かの意見を入れて考えないと、結局、無知蒙昧な自分の考えだけになってしまいます。論語に「學びて思わざれば則ち罔(くら)し。思ひて學ばざれば則ち殆(あやう)し」という孔子の言葉があります。勉強しても自分で考えなければ本当に理解することはできないし、自分の頭で考えるだけでほかから学ばなければ独断におちいって、それは危険思想だということです。これは今でも充分に通用する言葉だなと。芸術教養では、両方できる人になってもらいたいなと思っています。私もできてない部分がありますが……。

発想の邪魔をしないように

卒業研究は4年生後半でやるわけですが、テーマはその前に決めることになるので、4年生になる頃までに、テーマを固める?

そうです。卒業研究展と同時に、西キャンパスでレヴュー展をやっています。3年生のこれまでの振り返りですが、ある程度研究したいテーマが出ています。いろんなことに興味を持っている人がいて、たとえば黒にはこういうイメージの変遷があるとか、金色はゴージャスな感じがするとか、そういうことを調べたい人、2.5次元舞台に関係することを調べたい人、動物倫理とペットについて調べたい人、eスポーツや、肖像画と亡くなったあとの関係の研究など、本当にいろいろです。演劇と人材教育みたいなことや、アートと社会をつなげるにはどうしたらいいかといった、まさに芸術教養にぴったりの研究をしたい人、教育や言葉についてのテーマもあります。ただ、3年生の前期に考えていたことなので、後期になって変えてもいいよと言っています。卒業研究のテーマは、教員が指導しますがこちら側の発想じゃなくて、平成生まれで令和に二十代になった人たちの発想であることが大事なんです。なるべく教員はそれを邪魔したくないと思っています。

問題を解決する実践的な授業「プロジェクト」

自由にやりたいことができるという魅力についてはよくわかりました。もう片方の社会でやっていくための部分は?

本当はもうちょっと手を入れたいと思っていることがありまして、「プロジェクト」という授業があるんですが、社会では即役に立つのではないかと思います。今年度は、東キャンパスの問題解決ということをやっています。たとえば、東キャンパスのArt & Design Center East。ここにギャラリーがあることは外部の人にはわからないですし、どうやって来ていいのか場所もわかりにくい。それでストリートビューのような形で道案内できればいいんじゃないかということになり、動画を録ってYouTubeにアップ、展覧会のポスターやフライヤーにそのQRコードを貼るということを提案し、実際に動画を撮影し、マップに貼るところまで来ました。それから9号館の女性用トイレに鏡がないんですよ。すごく不満が出ていて、仮に100円ショップで買った小さな鏡を置いて、感想をアンケートで集めるということをやっています。もう一つ、東キャンパスの中でWi-Fiがつながりにくい場所があり、それをマップにしようというのもあります。こうした身近な問題を発見して解決するための方法を提案、さらにテストを繰り返して改善するという授業です。一般企業や役所の広報や企画でやっているようなことと一番近いですね。こうした授業をもっと充実させたいです。産学官連携のプロジェクトへの参加だとか、北名古屋市もいろいろな問題を抱えていると思いますので、そうしたことを解決、提案するみたいなことができるといいなと考えています。

芸術教養に新コース!?

今後、芸術教養でどんなことができるとお考えですか?

じつは芸術教養に『プロジェクト』でやっているようなクリエイティブ系というか、イノベーション系のコースを作るという話があります。私としては、サブカルチャーの中でまだ世界に通用しそうなマンガを中心にした、編集者であるとか、マンガミュージアムの学芸員であるとか、自分がマンガを描くのではなく、その周辺で携わっていくことを目指す、マンガ家をマネジメントしたり、プロデュースや売り出し方を考えるようなことができる人を育てるコースもあるといいかな。それから、アートディレクターを養成するようなコース。コロナ禍で難しくなっていますが、できれば留学生がたくさん来てくれるようなコースも良いですね。京都国際マンガミュージアムへ行くと、コロナ禍前ですが、すごくたくさんの外国人が来ていたんです。翻訳のマンガもありますが、日本語のマンガを一所懸命に読んでいます。そうした姿を見ると、まだまだマンガに大きな力があるなと思います。日本のマンガの版権を取っていろいろな国で出版するとか、電子書籍に載せるなど、そういうことのできる人になってもらえればいいかなと。アートに関しても、今後、日本でもアート作品をめぐるマーケットが大きくなることが予想されています。アートショップをプロデュースする人が出るといいですね。作品や作家についてインタビューしたり、解説したり、動画で配信してアートの魅力を伝えて身近に感じてもらえるような、そういうこともやっていきたいですね。