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NUA Records 『ベートーヴェン:交響曲第9番 ニ短調 Op.125』 が配信開始されました!

2025.06.11

音楽領域

NUA Records 『ベートーヴェン:交響曲第9番 ニ短調 Op.125』 が配信開始されました。
ぜひお聴きください!

ベートーヴェン:交響曲第9番 ニ短調 Op.125

ベートーヴェン:交響曲第9番 ニ短調 Op.125

NUAフィルハーモニー管弦楽団
指揮:松井 慶太
ソプラノ:山田 知加(大学院修了生)
メゾソプラノ:谷田 育代(名古屋芸術大学 非常勤講師)
テノール:中井 亮一(大学院修了生)
バス:伊藤 貴之(大学院修了生)
合唱:NUAハルモニア合唱団,名古屋芸術大学学生合唱団,NUAフィル第九2024特別合唱団

⒈ 第1楽章 Allegro ma non troppo, un poco Maestoso
⒉ 第2楽章 Scherzo. Molto vivace - Presto
⒊ 第3楽章 Adagio molto e cantabile
⒋ 第4楽章 Finale. Presto - Alegro assai

アルバムについて
音楽総合コース4年:中村 颯汰

このアルバムは、2024年8月に愛知県芸術劇場 コンサートホールで行われた、第13回NUAフィルハーモニー管弦楽団演奏会でのライブ録音から制作したアルバムです。本アルバムでは、通常ステレオだけではなく、立体音響フォーマットであるDolby Atmosでの制作を行いました。通常ステレオは、「ホールの客席中央で聴いているようなサウンド」を目指しました。愛知県芸術劇場 コンサートホールの豊かで素晴らしい響きを体験することができます。Dolby Atmos版では、「まるで指揮台の上に立っているかのようなサウンド」を目指しました。3次元的に音を定位させる立体音響ならではの生のコンサートでは体験できない音の臨場感という特別な体験をすることができます。

第4楽章に用いられる合唱の歌詞の中にこのような歌詞があります。
Seid umschlungen, Millionen!
(抱き合おう、幾百万もの人々よ!)
Diesen Kuß der ganzen Welt!
(この口づけを、全世界に!)
Brüder, über'm Sternenzelt
(兄弟よ、あの星空の、その上に、愛すべき、)
Muß ein lieber Vater wohnen.
(父なる神が住んでいるに違いないのだ)

この歌詞に則るならば、全世界は、皆兄弟であるといえます。平和といえない様々なことが起こる昨今、全人類が、穏やかで平和な日常を過ごせるように願っております。ベートーヴェンが残した人類への愛の讃歌をお楽しみください。

アートワークについて
ヴィジュアルデザインコース4年:鈴木 雅也

輝く星々の軌跡は、時を超えて響く音楽のように流れていく。この夜空を見上げるのは、世界の人々、緑の大地、気高い山々、そして深く青い海。広大な宇宙のもと、すべてがつながり、歓喜の歌が世界に満ちていく。そのようなベートヴェン交響曲第9番が持つ、音楽の壮大さと宇宙の広がりを、シンプルな構成で表現しました。

楽曲について

ドイツのボンに生まれた作曲家ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンが作曲した交響曲第9番は、音楽史上の傑作の1つに挙げられる。そして、後世の作曲家を始めとする多くの音楽家達に、今も尚、多大な影響を与え続けている。

第1楽章 Allegro ma non troppo e un poco maestoso
弦楽器群の静かな卜レモロの中で、第1主題を暗示する部分動機(5度を強調する要素)が呼応しながら始まる第1楽章は、革新的な「ソナタ形式」から成る。これまでの古典派の「ソナタ形式」で基準となっていた調の関係性も、その型を破り、二短調の第1主題から変口長調(平行調の下属調)の明るい第2主題へと移行する。その他の部分においても、長調と短調が交互に入れ替わりながら緊張感を伴って発展していく。「終結部」後半においては、「呈示部」冒頭を想起する弦楽器群のトレモロが再び現れ、不安な様相を感じさせる半音階を奏でながらトゥッティまで高揚し、ユニゾンによる第1主題で大胆に曲を閉じる。また、当時の流行として用いられていた反復記号も本楽章では使用していないことから、547小節という長大な楽章になっている。

第2楽章 Scherzo. Molto vivace - Presto
「複合3部形式」による第2楽章では、スキップをする様なオクターブの跳躍と、それに対比する音階的な動きが組み合わされた主要主題が、フーガ的書注によって発展していく。3拍を1ビートで捉え、疾走するこの「主要主題部」は、「スケルツォ(諧誠曲)」の性格を有し、この部分だけで「ソナタ形式」を想起させる展開を見せる。各部分には、第1楽章では見られなかった反復記号も設定されており、大規模な構成になっている。二長調に転じた「中間部」は、2分の2拍子による「トリオ」で、第1楽章にも断片的に現れた、第4楽章との関連を印象付ける旋律によって書かれている。本楽章で特に耳や目を奪われるのは、1オクターブでチューニングされたティンパニが、クールに活躍する曲想である。奏者のパフォーマンスも堪能できる楽章である。

第3楽章 Adagio molto e cantabile
木管楽器と弦楽器による2小節の導入の後、弦楽器群によって奏される和音の構成音を中心とした主要主題(第1主題)は、ベートーヴェンの祈りの心中を暗示するかのように、透明で穏やかな表情を持つ。本楽章は、作品中の「緩徐楽章」に位置付けられるが、これまでの慣例的な楽曲構成は採らず、ベートーヴェンらしい革新に充ちている。テンポ、調性の変化からも推察される通り、主要主題が対比した2つ目の主題(=第2主題)を挟みながら、その都度に変奏され、繰り返される。「ロンド形式」と「変奏曲」との融合、さらに解釈を広げて「2つの主題要素による構成」に焦点を当てれば、「ソナタ形式」との融合も加昧することができるであろう。見事な構成美を醸し出す楽章である。そしてこの思考=思想は終楽章へと受け継がれ、見事に開花する。

第4楽章 Finale. Presto - Alegro assai
第4楽章は、音楽史上でも重要な意味を持つ。それは、オーケストラの編成に「カンタータ」の形態である4人のソリストと4声の混声合唱を組み込んだことにある。楽曲の構成も、これまでの器楽に軸を置いた定型的な形式は用いず、20代前半から人生を懸けて温め続けてきた、シラーの詞「歓喜に寄す」の構成に添って作曲している。楽章全体は9つの部分から成るが、この「9」という数字が、第9という交響曲の数字と符合することも非常に興味深い。9つの各部分は、各々の拍子、調性、テンポを有し、全部分を大別すると、第1部分から第5部分までが「第1部」と捉えられる。この「第1部」では、第1楽章から第3楽章までの主要主題が懐古的にオーケストラによって奏され、第4楽章の主要主題である「歓喜の歌」へと繋がっていく。そして、歌詞の内容が変わる第6部分が「第2部」、第7部分から第9部分が「第3部(終結部)」と解釈できる。ベートーヴェンが、生涯で乗り越えてきた幾多の苦難の末に到達した精神世界は、「神」へと通じる信仰的世界であった。本作品は、作曲家・芸術家として歩んできたベートーヴェンの人生そのものを投影していると言っても過言ではない。

コンサートプログラムより 執筆:可知 奈尾子(名古屋芸術大学 准教授)

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